去る8月5日~8月9日に、サントミューゼにおいて 『第64回全国高等学校演劇大会』 (主催:全国高等学校演協議会)が開催され、その一環として昨年に引き続き「舞台技術講習会」が行なわれました。
8月4日に講師陣が現地入りし、5日間にわたって行なわれた講習会の様子をレポートを致します。
講師
■日本舞台美術家協会:土屋茂昭・長田佳代子
■日本舞台監督協会: 吉木均
■日本照明家協会 :乳原一美・倉本泰史
■金井大道具(背景) :金子幸雄・永山愛莉
■日本舞台音響家協会:藤田赤目
会場:上田市交流文化芸術センター(サントミューゼ)
日程:8月5日~8月9日講習会の個別講座と準備/8月9日 舞台技術講習会本番(120分)
8月7日~8月9日 第64回全国高等学校演劇大会
作品:長野県地区大会の参加作品の中から1作品を選んでもらい、
約10分間の台本に構成しなおしたもの を上演しました。
戯曲『流転とらとら』
作:松崎晃(長野県小諸高等学校教諭)/テキレジ・演出:長田佳代子
詳細スケジュール
土屋さんによる美術プラン平面図・舞台写真
講習会の様子
講座内容のポイント
今回のテキスト『流転とらとら』は、中島敦の山月記を題材にしており、60分の上演台本を8分にまとめましたが、人間と虎の間で、記憶や人間らしさが失われていく事に苦しむ主人公が、とても危うく不確かな存在として表現されており、また、月や竹といった情景も相まって、8分とはいえ、とても豊かな作品であったように思う。
そこに土屋さんの、異なる素材を層のように重ねる事で輪郭をぼやかし、複雑な表情を生む装置を軸に、各プランナーが作品性を共有し、それぞれの立場で具体的なアプローチを行うという、基本的かつ重要な作品への向かい方を講習会の中で感じとって頂けたのではないかと思う。
土屋さんの装置は、梱包材のプチプチを竹やバッククロスに抱かせ、単体では出せない表情が、とても美しく、小さな工夫が舞台美術として豊かな空間を生み出す可能性に繋がるという事を実感できたように思う。
照明に関しては、影の出し方を応用し、機材の置き位置や方向性、手作りのエフェクト素材を組み合わせ、水面などの具体的なものから、主人公の心情のような抽象的なものまで、ポイントを絞りつつではあるが、そのアプローチの楽しさをお見せできたように思う。
音響に関しては、スピーカーの位置と方向性の説明を簡単に行い、音源の組み合わせや、生音とSEとを重ねた時の効果など、こちらも作品性を大切にしつつ、そのアプローチが具体的に説明される事で、目には見えない音をいかに操るかという面白さへ発展させた講習内容になっていたように思う。 キャスト3名で主人公の李徴を演じるという演出上の工夫も入れ、各分野の技術の向上とともに、それらが一つになって完成されるスタッフワークそのものの仕事振りも、今回の面白みであったように思う。
長野大会審査結果
最優秀校 『フートボールの時間』:香川県立丸亀高等学校
優秀賞 『宇宙の子供たち』:宮城県仙台三桜高等学校
『M夫人の回想』:長野県松本美須々ヶ丘高等学校
『Time After Time ~インディアンサマーより~』:千葉県立松戸高等学校
舞台美術賞 『ガブリエラ黙示録』:山形県立山形東高等学校