伊藤熹朔記念賞

伊藤熹朔記念賞(旧:伊藤熹朔賞)とは

賞について

伊藤熹朔賞は、1967年、当協会初代会長の伊藤熹朔先生の没後先生のご友人達によってつくられた「熹朔の会」で創設され毎年舞台芸術をはじめとする各芸術分野において特に顕著な功績のあった人に「伊藤熹朔賞」が授与されていました。
しかし、1973年をもって「熹朔の会」による顕彰を終了し、当協会が舞台美術の賞としてその名称を引き継ぐことになりました。
舞台美術における年間最優秀作品の授賞はすでに46回を数えるまでになり、1977年に特別賞、1986年に新人賞、1996年に奨励賞が新設され、日本で唯一の舞台美術の専門の賞として高い評価をいただいています。

2021年に法人化への移行に伴い、更なる舞台芸術への創造発展に繋げてゆく事を目指して「伊藤熹朔記念賞」に改めました。

伊藤熹朔

1899年(明治 32年) 8月1日生まれ。
1925年(大正 14年) 築地小劇場第十九回公演『ジュリロス・シーロー』の装置で舞台美術家としてデビューの後、
新劇、歌舞伎、新国劇、新派、商業演劇、オペラ、ミュージカル、日本舞踊、バレエ、ダンス、人形芝居など幅広いジャンルにおける数多くの舞台美術を手がけ日本舞台美術の先駆者となる。
1953年(昭和 28年) 株式会社俳優座劇場付属の舞台美術部を芝区川桜町に開設。
1967年(昭和 42年) 3月31日、死去。 満67歳 没。

募集要項

賞の種類

表彰対象は舞台美術で、装置・衣装・小道具・かつら・メイク等が含まれる。

本賞、新人賞、奨励賞、特別賞とし、選考対象期間(2年毎)に上演された古典からコンテンポラリーまで含むあらゆる舞台表現作品より選出する。

【 本賞 】
最優秀舞台美術作品(装置、衣裳、メーキャップ等のデザイン)に対して授賞。かかわった全スタッフは作品への協働賛助として記録される。

【新人賞 】
舞台美術歴10年以内もしくは40歳以下の新人で、最優秀と認められる正会員へ贈られる。受賞は一度のみ。

【 奨励賞 】
制約された条件下(小規模劇場での公演・学校施設での公演・児童演劇等々)での活動や長年の実績、専門的な舞台美術に対する新たな取り組み等の実績のある正会員に贈られる。

【特別賞 】
長年にわたり舞台美術全般に対して、研究・教育・発展等に対して寄与し顕著な功績を残した協会員以外の方や団体に贈られる。正会員はデザイン業務以外の活動ならば選考対象となる。

※特別賞をのぞき、授賞対象は当協会会員に限られます

応募方法

1. ノミネート
協会員および、協会外の推薦委員(演劇評論家、演劇記者、演出家、振付家、照明家、舞台監督、プロデューサー、劇場関係者、舞台美術関係の技術者等)による投票により決定します。

2. エントリー
協会員は、自分の作品を3作品までエントリーすることができます。

審査

次選考はノミネート及びエントリーにより決定した候補者から提出されたポートフォリオを審査します。

一次選考を通過した候補者はファイナリストとして、審査資料(模型、デザイン画や図面、舞台写真などが入ったストーリーパネル、衣裳等)を東京芸術劇場アトリエウエストにて展示します。
展示された作品は期間中に伊藤熹朔賞選考委員(協会員と外部審査員)の審査の後、受賞者が決定されます。

なお、審査会は公開形式で行われます展示作品のあるアトリエウエストは一般の来場者にもご覧いただけるよう、展示期間中は開放しております。

受賞について

受賞式

伊藤熹朔先生の命日の時期である春に授賞式と受賞祝賀会が行われてきました。近年では先生のゆかりの劇場である六本木・俳優座劇場でも行われ、会場に集まった来場者の方々と受賞者が共に交流を深めました。

また受賞者にはトロフィーと副賞が授与されます。

授賞式(2014年 六本木・俳優座劇場)

第1回(2021年度)の受賞作品

 【 本 賞 】

| 松生 紘子  Hiroko MATSUO

作品:   「舞台少女ヨルハVer1.1a」の美術

主催:   「舞台少女ヨルハ」製作委員会

劇場:    東京建物 Brillia HALL

選評:

 ダイナミックに空間を切り取る空間構成と質感やデザイン性に見られる繊細さでこの物語の世界観が深く表現されており、原作のビジュアルではない新たな舞台美術表現として立ち上げた取り組みが高く評価できる。

受賞者のコメント:

 1973年からの長い歴史を持つ「伊藤熹朔賞」。

 協会の法人化への移行に伴い、賞の規程などの見直しを経て「伊藤熹朔記念賞」として新たにスタートした、第 1 回の本賞を頂きましたことを心から感謝し、その責任に身が引き締まる思いです。

 この歴史と舞台美術のバトンを次につなげていくべく、これからも1つ1つの作品に丁寧に真摯に向き合って参ります。

PROFILE

 大阪芸術大学 舞台芸術学科美術コース卒業後、8年間劇団四季に在籍。日生名作劇場「桃次郎の冒険」「王子とこじき」「冒険者たち」等、5作品の装置デザインを手掛ける。舞台美術家・土屋茂昭氏に師事。

 2009年渡英。Royal Central School of Speech and Dramaにて空間デザインの修士課程を納め、2014年までロンドンを拠点に活動。英国人デザイナーのアシスタントをヨーロッパ各地で数多く務めた。 

 帰国後は「レベッカ」(山田和也演出)、「恋、燃ゆる。」(石丸さち子演出)、「ルチア」(田尾下哲演出)、「バクマン 。THE STAGE」(ウォーリー木下演出)など、オペラ、ミュージカル、ストレートプレイ、2.5次元作品を数多くデザ インしている。

大阪芸術大学舞台芸術学科、日本大学芸術学部演劇学科にて非常勤講師『Dance with Devils』にて第44 回伊藤熹朔賞奨励賞受賞。

【 新 人 賞 】

| 平山 正太郎  Shotarou HIRAYAMA

作品:     「群盗」「虹色とうがらし」の美術

        「群盗」

主催:      CEDAR

劇場:      赤坂RED/THEATER

         「虹色とうがらし」

主催:      スーパーエキセントリックシアター

劇場:      あうるすぽっと

選評:

 対照的な二作品で、物語を包み込むディティールや質感へのこだわりを持ちながら多場面を展開させるアイデアの力と、ポップに構成された一杯道具での表現に今後の幅広い舞台美術家としての可能性が期待される。

受賞者のコメント:

 舞台美術家を志してから約十年、たくさんの尊敬する先輩方から「正太郎!」と気さくに接していただき、ときには叱られ、多くのことを教えていただきました。
 心強い同世代の演出家・スタッフと研鑽し合って、互いに成長を重ねてきました。これまで出会い、創作を共にした全ての方に心より感謝を申し上げます。
 今回いただいた新人賞をひとつのスタート地点と捉え、より一層精進していきたいと思います。
PROFILE
 1990年生まれ 長崎県出身。
 東京大学在学中にオープンデスクとしてセンターラインアソシエイツで研修。2012年より正式に所属。
 
 松井るみ氏に師事し、ストレートプレイ・ミュージカル・オペラのみならず、コンサート・イベントなど多岐にわたるセットデザインに美術アシスタントとして携わる傍ら、自らも美術家として活動中。
 
 主なデザイン作品として、劇団新派『黒蜥蜴』(齋藤雅文演出)、『ジャージー・ボーイズ・ イン・コンサート』(藤田俊太郎演出)、ミュージカル『刀剣乱舞』にっかり青江単騎出陣(伊藤栄之進演出)など。

【 奨 励 賞 】

| 針生 康  Shizuka HARIU

作品:     オペラ「Super Angels (スーパー エンジェル) 」の総合舞台美術

主催:     文化庁、(独)日本芸術文化振興会、(公財)新国立劇場運営財団

劇場:     新国立劇場 オペラパレス

選評:

本来の舞台美術の領域である装置・照明・衣装・小道具等全てのデザインを担った作品創りは日本おいては新鮮であり、今後の舞台美術家の舞台芸術分野での新しい可能性を感じさせる。

受賞者のコメント:

 伊藤熹朔記念賞奨励賞に選出して頂きありがとうございます。前例の無い方向性の新作オペラのデザ インに対して賞をいただいたことを感謝しております。

 デザインの技術と視覚的演出全般において、 日々これからも発展できるように取り組んでいきたいと思います。

PROFILE
©︎Emli_Bendixen

宮城県出身。

 英国舞台建築博士号取得。日本大学海洋建築学科卒業、東京理科大学大学院建築学修士課程修了後、文化庁新進芸術家海外派遣制度・ポーラ美術財団の助成にて、ロンドン芸術大学セントラルセントマーチン校にて舞台美術修士課程から博士課程に移籍と同時に、ベルギー王立モネ歌劇 場やローザスで舞台美術助手として研修。現在は SHSH Architecture+ Scenography 代表。日欧を中心に舞台美術、アートディレクション、空間デザインを手がける。

 主要作品にオペラ『スーパーエンジェル 』新国立劇場、『Written on Skin』サントリーホールの 総合舞台美術、アクラムカーン&シルヴィギエム『聖なる怪物たち』、英国王立芸術院『Sensing Spaces』、オノ・ヨーコ『Bells for Peace』MIF2019、小池ミモザ『Tsunagu』(モンテカルロバレエ・モナコ、ジャポンダンスプロジェクト『Cloud / Crowd』等のデザイン担当、世界各地で公演。

 受賞歴に日本初ワールドステージデザイン2017 銅賞、ワールドステージデザイン2022 では2作品ノミネート、D&AD 賞、ドイツデザイン賞、伊藤熹朔記念賞奨励賞他多数。英国紙ガーディアンにてベストシアターデザイナーの12人の1人に選出され、NY Times、Sadler’s Wells に活動が掲載。 また、英国舞台美術最優秀展に3度連続選出されロンドンの V&A 博物館や PQ2015,2019 に展示。 国際デザイン NonA Award, ADC Award ゲスト審査員、ロンドン大学、バックス大学、アントワープ大学、フランダース建築家協会講演多数。

【 特 別 賞 】

| 松本 邦彦  Kunihiko MATSUMOTO

分野:     舞台背景

所属:    (有)美術工房拓人

選評:

 作品に対し真摯かつ丁寧に向き合い、その世界観に背景家としての考えをプラスし表現する。プランナーの思いに寄り添い、その背景力は多くの舞台美術家から信頼されている。

受賞者のコメント:

 この度は熹朔記念賞特別賞の授与、ありがとうございました。

 この道に入って43年、その長い道を一生懸命歩んできたご褒美と思っています。これからもあぐらをかくことなく、美術家の方々と楽しみながら精進していきたいと思います。

 それから拓人で共に汗を流している素晴らしい仲間達にも感謝しています。ありがとう!

PROFILE

 1959 年生まれ。栃木県出身。

 日本工学院美術科卒業、(株) 俳優座劇場を経てフリーとなり日本テレビ麹町地下工房で『スーパー JOKEY』『歌のワイド 90分』『元気が出るテレビ』等 TV 美術背景製作。

 平成元年 ( 有 ) 美術工房拓人設立。舞台美術家の石井みつる氏のモーツァルトイヤー 1991 オペラ『魔笛』が転機となり舞台中心の活動になる。1993 年『テレズ・ラカン』からほぼ TPT 全作品を製作。

 朝倉摂氏の作品や演出家、串田和美氏・栗山民也氏・白井晃氏の作品を多く手掛け、また演出家デヴィット・ルヴォー はじめ、サイモン・マクバニー『春琴』、インバルピント『100 万回生きたねこ』、マイク・ブリットン『ロミオ & ジュリエット』、マックス・ジョーンズ『地獄のオルフェイス』他、国内問わず海外の美術家からも信頼を受け活躍。美術家の要望に答える為新たな技術・素材を使い演劇業界に貢献している。