‖‖ 「座・高円寺」という劇場の建物自体がイマジンでもあるというニュアンスもあります。
―――あちらの巨大な箱は?
香坂 あれはラジオブースで、さっきのカミカミ郵便局から届いたハガキを読んだり、子供達に予想してもらった天気予報の番組を流して、時間になったら向こうの公園に(※イベント空間の対角の奥のエリアを示しながら)、その天気を映写したり、エリアとエリアを繋いでいくという考えで設置しました。
―――先ほどもおっしゃってましたが繋いでいく…いい言葉ですね。となりの壁は?とてもキラめいて見えますが… (いくつか大きい丸い穴が空いていてその中にキラキラした物が埋まっています。)
香坂 あそこは、毎日毎日子供達が作ってくれた工作物を飾っていっています。イマジンのココロで、子供達の想像する元気なイマジンを考えてもらってそれらで(心の)穴を埋めていく。テーマと同じでいっぱいになったらイマジンが元気を取り戻す設定になってます。
今日、あそこの埋まってないところが全部埋まると、イマジンが元気になって目覚めてくれる事になります。
―――ここでもテーマとのリンクが。照明効果と相まってキレイなガラスのおはじきの様にも見えます。
香坂 丸い穴が壁に空いているのはこの「座・高円寺」という劇場の建物に丸窓がたくさんあって、この建物自体がイマジンでもあるというニュアンスもあります。
―――建物とのリンクですか。そう言われてみれば同じですね。
香坂 それと何回も来る子供たちが次に来た時に自分の作ったものがどこに飾られているんだろうと見つけるのもーー先ほども言いましたがーー楽しみの一つなのです。
―――確かに楽しみですね。
香坂 こちらはバレバレ砂漠です。 肝臓(レバー)の部位に掛けてます。床を掘り下げて3人ほど入れる様になってます。緩衝材やプチプチを入れて靴を脱いで素足で感触を楽しむ、ちょっとした足場湯的な休憩所にしています。
―――このお座敷のようなセットは?
香坂 こちらはシワシワ和室。芝居っぽいセットを一つ用意しようとデザインしました。器官としては鼻と花に掛けて、ここで紙の花を作って和室の周りの花壇に飾ったり床の間で活けたりして、いい匂いで元気にしようという挿して花で埋めようというエリアになってます。床の間の形が一応鼻の穴になっていて、そこから材料を取り出して… (笑)。
―――隅から隅まで凝ってますね。残念ながら今満席で入れませんね(笑)。(満席の貼り紙)
香坂 はい(笑)。会場自体もそうなんですが、エリアでも密にならないように人数制限をしています。
普段はもっと入り組んだスペースになってて、わざとに隠れたエリアをこしらえたりします。ですが今回はコロナの影響で密閉する狭い空間を作れず…
―――残念ですね。そういうところにもコロナの影響があるんですね。
香坂 そうです。子供達は秘密基地とか好きじゃないですか。そういうものを本当は提供してあげたかったです。
―――あぁ、確かに。自分にもありました、秘密基地。
香坂 でもおもしろいことに勝手に作られていくんですよ。先ほどのアゲアゲの木の裏は吊り電球の高さが変わって壁に映るセロファンや蓄光モビールの影の形が変わるという、影絵で遊ぶだけの狭い空間だったんですが、こちらの予想に反して皆んなから見えない場所が勝手に秘密基地化して行き…(笑)
―――いくつもの予想外の出来事が起こってますね(笑)。
‖‖ 子供達の元気に負けない様にこちらも元気さを出せる様にしました。
―――反対に会場の真ん中はひらけた工作場になってますね。レーンの下。
香坂 ハラハラ時計と呼んでます。上から毎日毎日ある一定の時間に特別な素材が降りて来て――例えば今イマジンが草原の夢を見ていたなら緑色のもの――その素材を使って子供達の想像するイマジンの顔や姿を作って行くという流れです。リピーターの子供達も毎日違ったもので楽しく遊べるという趣向になってます。
―――なるほど。先ほども聞きましたがリピーターの子も結構いるのですね?
香坂 はい。特に近所の子供達は何度も来る子もいます。毎日、だけでなく毎年来てもらえると嬉しいですね。例えば、あの子は(※目の前を横切った子を示して) 中学生なんですけど毎年毎年来てくれてて「ここのキャストにはどうやったらなれますか?」と聞かれました。
―――それは嬉しいですね。ちなみにキャストとは?
香坂 キャストとは会場のこの世界の住人--イマジンの腸内細菌的なイメージ--です。座・高円寺のアカデミー生やその修了生が担当してくれてます。装置の製作など準備段階から関わって、イベント期間中は子供達を案内したり会場を盛り上げてくれてます。今回は消毒だけする消毒隊キャストもいて、子供が触るものは1回1回消毒液で拭いて…。そしてキャストも1時間に1回消毒休憩してます。
―――参加型イベントでとても困難な状況だと思いますが、徹底してますね。
香坂 はい、皆で気をつけてます。最後はモコモコ園です。特に静かに過ごしたい子供達のためにこの空間を用意しました。たくさんの絵本を置いて読書をしてもらったり、さらに中身が白紙の本も作って子供達が文字を書いたり絵を書いたりして自由に楽しんでもらおうと思って。
―――皆んながみんな動き回るばかりでなくて?いい配慮ですね。しかも本をつくる?
香坂 はい。例えば、1ページとか何ページかづつですが、みんなで話や絵を書いていき一冊の本を完成させるということも始まって続いています。
―――何人かで1冊の本を!?すごく練られたプランですね。
香坂 ここでも繋がる・繋げるという私たちのテーマで…。
―――そうですか。後でゆっくり伺いたいですね。それにしても会場を回ってみて沢山の造形物に可愛いモチーフ、色もカラフルで幻想的かつポップな空間。素晴らしいです。
香坂 ちょっと派手かなーと思ったんですが…子供達の元気に負けない様にこちらも元気さを出せるようにしました。雰囲気作りは照明にも助けられています。毎日テーマがあって、イマジンが海の夢を見ていたら海っぽい明かりを演出したり…と毎日来ても見え方が異なるようにしています。
―――ここでも皆んなで力を合わせて…ですね。
香坂 はい、そうです。先ほど説明したキャストの方々もそうですが、たくさんの人たちが支えてくれてます。みんなのマジカラ (=子供達が作ってくれたもの) がいっぱいになってきてる最終日の今日は、みんなで作った楽器を鳴らしながらパレードをして、イマジンが目覚め会場は全員で賑やかに盛り上がる、という事を最後にやる予定です。
―――素晴らしい、フィナーレのイベントですね。最後まで無事に行くとよいですね。この後はもう少し付き合っていただき、今回のデザインのことなど更に聞きたいと思います。
構成・文・撮影: JATDT広報委員会