‖‖  「感動する景色を創りたい」という想いはずっと私の中にあると思います。

―――ちなみにインスピレーションとかリサーチなどは?

香坂        私自身、子供向けの演劇はやったことがあったのですが、この様な体験型のイベントは初めての経験で最初はどうアプローチしようかと迷いました。でも資料本など見て参考にするよりもまず体験しなくてはダメだろうと思い…

 

―――なるほど。参加者の目線で。

香坂        それでイベントに行こうと探したのですが、あいにくコロナ禍で参加がなかなか難しく…

 

―――ここでもコロナの影響が。

香坂        もうディレクターチームと、皆で思いつくままブレインストーム会議を定期的に重ねて重ねて、意見を手当たり次第投げ合い、シュミレーションをするということを続けました。

妄想力の駆使です。

 

―――なるほど、徹底的に想像する、ですか。では自身が子供の頃の演劇体験の思い出などはどうでしょうか?例えば今回のイベントのデザインに活かされてることはありますか?

香坂        幼い頃、北海道の田舎に住んでいたんですけど、あちらの景色や植物相は全然本州と違っていて…とてもダイナミックなんです。林を歩いていくと一面スズラン畑に変化したり、そばにある水たまりを掬うとおたまじゃくしだらけとか。記憶の中での原風景は雄大な自然がすごくキラキラしていて、それを創りたいというか見たいと思ってますね。

今回のイベントにそれが活かされているかどうかはわかりませんが、「感動する景色を創りたい」という想いはずっと私の中にあると思います。

 

―――感動する景色ですか。素敵ですね。普段の演劇のデザインアプローチやプロセスと今回はどう違いましたか?

香坂        芝居というものはまず脚本があって、それは割とブレない拠り所として存在しているわけです。デザインすることは脚本を読み込んで答えを見つけていく…という感じなのですが、このイベントは….

 

―――勝手が違いましたか?

香坂        そうですね。やはり単なる見世物でなく、デザインした劇場空間に入ってきて体験してもらうというイベントなので正解がなく――もちろん芝居の美術も正解はないんですが――お芝居以上に子供達がどう反応するかと事を考えるところに苦労しました。ここでも「妄想力」を力一杯駆使しました。

 

―――それは大変ですね。子供達は常にこちらの想像の上を行きますね。

香坂        ですので、あまり完成させすぎない、子供が創り上げていける余地を残しておく…というところにも気をつけました。先ほども言いましたが「子供が膨らましていける空間」です。その上で魅力的な空間にもなってなくてはいけない。

 

―――案配が難しそうですね。

香坂        はい。それからビジュアル面だけでなく、こういうものを取り入れたら――例えば赤い平均台の上に何色かの丸を点々とつけて決まった色だけ踏んで渡る遊びを誘導するとか、赤い線だけ辿って行って遊べるコーナーとか――こんなことが出来るのではないかという遊び方の提案などが芝居に関わる時とは違っていました。もちろん芝居では小道具の使い方の提案をするなどとの類似性はありますが。

それから少し話がずれますが、私がデザインしたものの意図をキャストさん達が汲み取ってくれて、あるいはそれ以上の方法で使ってくれているので、意図した以上のものが生み出されている印象を受けます。プランナーのアイディアだけで終わらずにどんどんプラスアルファが積み重なっている。来場した子供たちやエリア担当のキャストの人が一緒になってデザインというか、遊び方も考えてくれる。

 

―――スタッフ側にも「膨らましていける」余地があったという感じですね。他には?

香坂        子供達相手なので、普段芝居で使う大道具用の素材ではなく、身の回りの日用品を使って素材選びをしていきました。お芝居だと立体物はスチロールで削ったりなどしますが、あまりにリアルだとホラーチックになって怖がる子もいるし、それ以上の面白さは生まれない。

 

ーーーなるほど。

香坂        そうではなくて普段こう使っているもの、こう見えているものが、こんな風に変化するんだよ!ということを子供達に見せたくて。

 

―――そういう機会はとても意義がありますね。今回のデザイン過程で一番楽しかったことは?

香坂        元々人と一緒にものを創るということが好きですが、今回参加している座・高円寺アカデミー生の若い世代と作業をできたのはとても良かったです。作業自体は大変なことも多かったですが、沢山エネルギーを吸いと…もらいました(笑)。

 

―――(笑)。逆に今回のデザイン過程で一番大変だったことはありますか

 

レーンのバランスを取ろうと奮闘する子どもたち

香坂        レーンの仕組みを考えるのが大変でした。まず6尺 (※約180cm) のもので、ある角度でまず試して、そこから段々と調整していき…と言うだけなら簡単なんですが、シーソー部分とか子供が引っ張る部分とかバランスを取るところにそれこそ何日も何日も四六時中違う角度と長さで試して…自動復旧しないといけない、やりっぱにしておけない箇所がなかなか自分の中でうまくいかなくて、これは孤独な作業でした。

―――でも視覚的に圧巻でした。今回上手く出来たことはありましたか?

香坂        カラフルにしたところかな。作業中、みんなでちょっと眩しいかなー、と言いながら塗っていたんですが、イベントが始まってみると案外全然そうでもなかったです。アンケートでも、保護者の方がこのコロナ禍で社会が沈んでいるので元気に溢れてていいね、とかなり好評でした。

 

―――細かいところまで凝ってましたね。ちなみに良い意味でも悪い意味でもびっくりしたことはありましたか?

香坂        先ほども言いましたが、子供達がこちらの予想以上の遊び方をしてくれるところです。これに尽きますね。

 

―――ではやりたかったけど、出来なかったということはありましたか?

香坂        子供達は秘密基地とか本当に好きで、入り組んだ空間や吸い込まれていく様に小さい閉じた空間に集まることが多いのですが、コロナ禍で密な空間をなるべく作らない様にしたのでそれが少し残念です。

それから、もう少し高台や段差をつけてもっとアスレチック感を出したかったのですが、あまりフィジカルなセッティングにしてしまうと、より激しい接触が起こるのでそれも自制しなくてはいけませんでした。

無駄な高低差とかくぐる行為っていうのが、子供達にとっては特別なエリアに入ったよ、とか体感としてあるのでとても大事でしたが、結果的にフラットな空間になって…

 

―――なるほど、それは本当に残念でしたね。それでもフラットな空間とは全く思えませんでしたし、本当に楽しく素晴らしいデザインとイベントでした。

香坂       ありがとうございます。

 

---今日は本当に興味深い話を聴きながら会場内もわざわざ案内してもらって楽しめました。ありがとうございます。

ここから先はさらにページを移して舞台美術家としての香坂さん自身のことを少し伺おうと思います。

<<PREVIOUS PAGE

香坂6のコピー
プロフィール
香坂 奈奈 (こうさか なな)

女子美術大学工藝科織専攻を卒業後、舞台美術家加藤ちか氏、堀尾幸男氏に師事。2001年に三田村組「分署物語2」下北沢「劇」小劇場公演で、初デザイン。文化庁新進芸術家海外研修制度研修員として2014年より1年間ドイツベルリンのBerliner Ensemble劇場にて舞台美術の研修を行う。2017年第45回伊藤熹朔賞本賞を森新太郎演出「管理人」の美術で受賞。1977年生まれ。

主な作品に、ONEOR8「思い出トランプ」、シアタークリエ「ゼブラ」、三田村組蓬莱竜太演出「男の一生」、TEAM NACS「下荒井兄弟のスプリング、ハズ、カム」、演劇集団円「Double Tomorrow」、ナイロン100℃「睾丸」、SPAC西悟志演出「授業」、こまつ座「どうぶつ会議」、シアタートラム小川絵梨子演出「熱帯樹」。

編集後記:

「みんなのリトル高円寺」は無事最終日を終えまして、期間中に1000人以上の来場者を迎えられたとお知らせがありました。感染対策も徹底していたおかげで感染者発生は0人、この時期の参加型のイベントとしてはとても誇らしい結果になりました。

お子さんのいらっしゃる方はぜひ来年参加してみてはいかがでしょうか?今回来場されていた方々のように、皆さん笑顔で劇場を後にされることでしょう。

構成・文・撮影: JATDT広報委員会