サステナブルな舞台芸術を目指す
04/10/2026
3月26日のNewsweek日本版に当協会員の大島広子氏(おおしま ひろこ)の持続可能な舞台芸術を目指す活動が取り上げられました。
大島氏はイギリスで生まれたTheatre Green Bookの運動にいち早く注目し、一般社団法人Image Nation Green(イマジネーション・グリーン:以下, ING)を代表理事として立ち上げて、その考えや活動を日本に紹介し、自らもワークショップを開催したり、公演におけるデザインで実践したりと先陣を切って持続可能な舞台芸術を目指しています。
記事の中では、まず舞台芸術の現場において、公演後にほとんどの大道具が廃棄されるという構造的な流れを大島氏の舞台美術家としての経験も交えて指摘し、この問題が個人の葛藤としても積み重なってきたことに触れ、同時に社会全体のSDGsの潮流と舞台業界との乖離に光を当てています。
そして、INGの取り組みとして、英国発のガイドライン「シアター・グリーン・ブック」の日本語版普及を取り上げ、環境面にとどまらず労働環境やアクセシビリティといった社会的側面を含めた包括的な視点の重要性を示しています。
一方で、日本の舞台製作においては制作期間の短さや資金的制約が大きな障壁となっていると述べ、再利用を前提とした設計や素材選定に十分な時間とコストを割くことの難しさを浮き彫りにしています。
こうした状況の中で、大島氏と演劇集団 円 によるリサイクル可能な舞台設計や廃棄物の可視化を実践した公演や、長野県での地域資源や再生可能エネルギーを活用した劇団 野らぼう の事例が紹介され、舞台の質を維持しながら環境負荷を低減できる可能性や、持続可能性と創造性の両立に向けた多様な試みを言及しています。
加えて、新国立劇場のレパートリーシステムに注目し、舞台美術の長期保管と再利用が廃棄削減に寄与している点を評価する一方で、保管スペースの限界や素材の耐久性といった課題にも言及しています。
最後に、上記のような具体的事例を通じて、持続可能な舞台制作を一部の先進的な取り組みにとどめず、業界全体の標準へと転換していく必要性に焦点を当て、資材共有の仕組みや公的支援の充実といった制度的整備の重要性を読者に問いかけています。
皆さんも、舞台芸術の創造過程そのものを問い直す契機として、環境問題と芸術の表現について考えてみてはいかがでしょうか?
編集後記:
一般的に、これまでは作品に対してどのようにクリエイティブな表現が出来るかということだけを考えていましたが、様々な環境問題や労働問題に対して、クリエイターも製作過程のことについて考え始めることが当たり前になる時期が来ているのかも知れません。
因みに、Newsweekの記事では『舞台芸術が抱える「闇」』という見出しになっていますが、元々日本の舞台は定型サイズのパネルや台などを保管し、再使用をするという事を歌舞伎を始め長い間実践しており、欧米に比べると全てを廃棄するという流れにはなっていません。(※注:欧米でも全ての公演において全て廃棄するという事もありません。)
そして、近年の環境問題に対して、更に資源を無駄にしない、或いは積極的にリサイクルに取り組みを始めている大道具会社や舞台芸術団体も多数あります。Newsweekの記事が結んでいるように、近い将来に業界全体での意識向上と課題に向き合う動きが出てくることが必要であり、それを期待したいと思います。