第1回(2020〜2021年度)の受賞作品

 【 本 賞 】

| 松生 紘子  Hiroko MATSUO

作品:   「舞台少女ヨルハVer1.1a」の美術

主催:   「舞台少女ヨルハ」製作委員会

劇場:    東京建物 Brillia HALL

選評:

 ダイナミックに空間を切り取る空間構成と質感やデザイン性に見られる繊細さでこの物語の世界観が深く表現されており、原作のビジュアルではない新たな舞台美術表現として立ち上げた取り組みが高く評価できる。

受賞者のコメント:

 1973年からの長い歴史を持つ「伊藤熹朔賞」。

 協会の法人化への移行に伴い、賞の規程などの見直しを経て「伊藤熹朔記念賞」として新たにスタートした、第 1 回の本賞を頂きましたことを心から感謝し、その責任に身が引き締まる思いです。

 この歴史と舞台美術のバトンを次につなげていくべく、これからも1つ1つの作品に丁寧に真摯に向き合って参ります。

PROFILE

 大阪芸術大学 舞台芸術学科美術コース卒業後、8年間劇団四季に在籍。日生名作劇場「桃次郎の冒険」「王子とこじき」「冒険者たち」等、5作品の装置デザインを手掛ける。舞台美術家・土屋茂昭氏に師事。

 2009年渡英。Royal Central School of Speech and Dramaにて空間デザインの修士課程を納め、2014年までロンドンを拠点に活動。英国人デザイナーのアシスタントをヨーロッパ各地で数多く務めた。 

 帰国後は「レベッカ」(山田和也演出)、「恋、燃ゆる。」(石丸さち子演出)、「ルチア」(田尾下哲演出)、「バクマン 。THE STAGE」(ウォーリー木下演出)など、オペラ、ミュージカル、ストレートプレイ、2.5次元作品を数多くデザ インしている。

大阪芸術大学舞台芸術学科、日本大学芸術学部演劇学科にて非常勤講師『Dance with Devils』にて第44 回伊藤熹朔賞奨励賞受賞。

【 新 人 賞 】

| 平山 正太郎  Shotarou HIRAYAMA

作品:     「群盗」「虹色とうがらし」の美術

   「群盗」

主催:      CEDAR

劇場:      赤坂RED/THEATER

   「虹色とうがらし」

主催:      スーパーエキセントリックシアター

劇場:      あうるすぽっと

選評:

 対照的な二作品で、物語を包み込むディティールや質感へのこだわりを持ちながら多場面を展開させるアイデアの力と、ポップに構成された一杯道具での表現に今後の幅広い舞台美術家としての可能性が期待される。

受賞者のコメント:

 舞台美術家を志してから約十年、たくさんの尊敬する先輩方から「正太郎!」と気さくに接していただき、ときには叱られ、多くのことを教えていただきました。
 心強い同世代の演出家・スタッフと研鑽し合って、互いに成長を重ねてきました。これまで出会い、創作を共にした全ての方に心より感謝を申し上げます。
 今回いただいた新人賞をひとつのスタート地点と捉え、より一層精進していきたいと思います。
PROFILE
 1990年生まれ 長崎県出身。
 東京大学在学中にオープンデスクとしてセンターラインアソシエイツで研修。2012年より正式に所属。
 
 松井るみ氏に師事し、ストレートプレイ・ミュージカル・オペラのみならず、コンサート・イベントなど多岐にわたるセットデザインに美術アシスタントとして携わる傍ら、自らも美術家として活動中。
 
 主なデザイン作品として、劇団新派『黒蜥蜴』(齋藤雅文演出)、『ジャージー・ボーイズ・ イン・コンサート』(藤田俊太郎演出)、ミュージカル『刀剣乱舞』にっかり青江単騎出陣(伊藤栄之進演出)など。

【 奨 励 賞 】

| 針生 康  Shizuka HARIU

作品:     オペラ「Super Angels (スーパー エンジェル) 」の総合舞台美術

主催:     文化庁、(独)日本芸術文化振興会、(公財)新国立劇場運営財団

劇場:     新国立劇場 オペラパレス

選評:

本来の舞台美術の領域である装置・照明・衣装・小道具等全てのデザインを担った作品創りは日本おいては新鮮であり、今後の舞台美術家の舞台芸術分野での新しい可能性を感じさせる。

受賞者のコメント:

 伊藤熹朔記念賞奨励賞に選出して頂きありがとうございます。前例の無い方向性の新作オペラのデザ インに対して賞をいただいたことを感謝しております。

 デザインの技術と視覚的演出全般において、 日々これからも発展できるように取り組んでいきたいと思います。

PROFILE
©︎Emli_Bendixen

宮城県出身。

 英国舞台建築博士号取得。日本大学海洋建築学科卒業、東京理科大学大学院建築学修士課程修了後、文化庁新進芸術家海外派遣制度・ポーラ美術財団の助成にて、ロンドン芸術大学セントラルセントマーチン校にて舞台美術修士課程から博士課程に移籍と同時に、ベルギー王立モネ歌劇 場やローザスで舞台美術助手として研修。現在は SHSH Architecture+ Scenography 代表。日欧を中心に舞台美術、アートディレクション、空間デザインを手がける。

 主要作品にオペラ『スーパーエンジェル 』新国立劇場、『Written on Skin』サントリーホールの 総合舞台美術、アクラムカーン&シルヴィギエム『聖なる怪物たち』、英国王立芸術院『Sensing Spaces』、オノ・ヨーコ『Bells for Peace』MIF2019、小池ミモザ『Tsunagu』(モンテカルロバレエ・モナコ、ジャポンダンスプロジェクト『Cloud / Crowd』等のデザイン担当、世界各地で公演。

 受賞歴に日本初ワールドステージデザイン2017 銅賞、ワールドステージデザイン2022 では2作品ノミネート、D&AD 賞、ドイツデザイン賞、伊藤熹朔記念賞奨励賞他多数。英国紙ガーディアンにてベストシアターデザイナーの12人の1人に選出され、NY Times、Sadler’s Wells に活動が掲載。 また、英国舞台美術最優秀展に3度連続選出されロンドンの V&A 博物館や PQ2015,2019 に展示。 国際デザイン NonA Award, ADC Award ゲスト審査員、ロンドン大学、バックス大学、アントワープ大学、フランダース建築家協会講演多数。

【 特 別 賞 】

| 松本 邦彦  Kunihiko MATSUMOTO

分野:     舞台背景

所属:    (有)美術工房拓人

選評:

 作品に対し真摯かつ丁寧に向き合い、その世界観に背景家としての考えをプラスし表現する。プランナーの思いに寄り添い、その背景力は多くの舞台美術家から信頼されている。

受賞者のコメント:

 この度は熹朔記念賞特別賞の授与、ありがとうございました。

 この道に入って43年、その長い道を一生懸命歩んできたご褒美と思っています。これからもあぐらをかくことなく、美術家の方々と楽しみながら精進していきたいと思います。

 それから拓人で共に汗を流している素晴らしい仲間達にも感謝しています。ありがとう!

PROFILE

 1959 年生まれ。栃木県出身。

 日本工学院美術科卒業、(株) 俳優座劇場を経てフリーとなり日本テレビ麹町地下工房で『スーパー JOKEY』『歌のワイド 90分』『元気が出るテレビ』等 TV 美術背景製作。

 平成元年 ( 有 ) 美術工房拓人設立。舞台美術家の石井みつる氏のモーツァルトイヤー 1991 オペラ『魔笛』が転機となり舞台中心の活動になる。1993 年『テレズ・ラカン』からほぼ TPT 全作品を製作。

 朝倉摂氏の作品や演出家、串田和美氏・栗山民也氏・白井晃氏の作品を多く手掛け、また演出家デヴィット・ルヴォー はじめ、サイモン・マクバニー『春琴』、インバルピント『100 万回生きたねこ』、マイク・ブリットン『ロミオ & ジュリエット』、マックス・ジョーンズ『地獄のオルフェイス』他、国内問わず海外の美術家からも信頼を受け活躍。美術家の要望に答える為新たな技術・素材を使い演劇業界に貢献している。