PQ2027に向けて――JATDT・PQ委員会が始動

09/04/2026

 2027年に開催される世界最大の演劇祭展、プラハ・カドリエンナーレ(Prague Quadrennial)に向けて、日本舞台美術家協会が参加に向けて始動しました。

 プラハ・カドリエンナーレ(PQ)は、1967年にチェコ共和国のプラハで創設されて以来、4年に一度開催される世界最大規模の舞台美術・パフォーマンスデザインの国際展として、毎回最大80か国からアーティスト、研究者、学生が集まり、それぞれの作品や活動を発表します。近年は展覧会とライブ・アート・フェスティバルの要素をあわせ持つ催しへと発展して、会期中には、数百におよぶ展覧会、インスタレーション、パフォーマンス、ワークショップ、専門家によるディスカッションなど、多彩なプログラムが繰り広げられています。

>>>PQ サイト(英語表記)

 

 PQでは毎回、展示全体を貫くテーマが掲げられ、参加する国や地域がそれぞれの解釈をもとに独自の展示を展開します。今回のテーマは「沈黙と不在」。日本チームも昨年末から準備を進めてきましたが、いよいよ本格的に動き始めました。ここからは、その歩みを随時ご紹介していきます。

【国・地域部門】

初期案の1つ

 今回の国・地域部門では、当協会の国際交流委員長である二村周作氏が、キュレーターを務めます。前回のPQでは学生部門のキュレーターの一人であり、PQシンポジウム(06/19記事参照)にも参加した二村氏。PQ2027では、国・地域部門のキュレーターと展示ブースのデザイナーの二刀流で、日本チームを率います。

>>>PQ2027のインスタグラムで、最初に来場したPQ1999の印象を語る二村氏

 今回のテーマに対して、二村氏は「『存在していた痕跡』というものに着目したい。それを、何かを型取った石膏が崩れ、散乱しているような造形によって『不在と沈黙』という痕跡を表せないか?そして、来場者が実際に触れることで、見るだけではない『感じる』体験を生み出せないか?」と提案し、そこから検討が始まりました。

初期のラフ模型でオンラインミーティングに参加の二村氏

 その背景には、「現在のセノグラフィーは、視覚に偏りすぎてはいないだろうか」という問いがあると二村氏は語ります。JATDTが取り組んできた「触る模型」のように、複数の感覚に働きかける展示を目指したい。さらに、空間を囲う壁には、内と外の境界を曖昧にする日本建築の感覚を取り入れ、紐状の素材など、触れながら外の気配も感じられるものを使えないか。また、展示するだけの空間ではなく、トークやディスカッションなどが行われる場にする可能性も考えたい――。こうした構想とともに、いくつかのブース初期案が披露されました。

 委員会メンバーからも、「『触る模型』から『触る美術』へと発展している点が面白い」「石膏だけでなく、扱いやすく輸送にも適した和紙を使えば、日本らしい情緒も表現できるのでは」「崩れた石膏の散乱した床が感情を揺さぶられる」といった感想が寄せられ、活発な意見交換が行われました。

 まだ構想は始まったばかりです。これからPQ本部や現地の大道具製作者とも連絡を取りながら検討を重ね、チーム一丸となって日本展示を形にしていきます。今後の展開に、どうぞご期待ください。

第2のラフ模型で対面打合せ
第2ラフ模型
第2ラフ模型〜俯瞰

【学生部門】

学生部門キュレーター・青木氏によるコンセプト提案

 PQには、世界各国で舞台芸術や演劇を学ぶ学生たちが、作品づくりを通して出会い、交流する「学生部門」があります。日本でも国・地域部門と時期を同じくして、PQ2027に向けた活動が始まりました。

 今回、日本の学生部門でキュレーターを務めるのは、日本大学芸術学部演劇学科で舞台美術の専任教員を務める青木拓也氏です。青木氏は前回のPQ2023でも中心的な役割を担い、プラハ現地では屋外の学生ブースの設置に尽力しました。その経験を生かしながら、今回も学生たちとともに展示ブースの構想を深めていきます。

 PQ2027が掲げる全体テーマ「不在と沈黙」を受けて、青木氏は日本の学生ブースに「然―zen―」という独自のコンセプトを提案しました。日本特有の生と死に対する価値観を取り入れながら「沈黙と不在」というテーマを読み解いていこうとしています。

 今回のプロジェクトには、関東・関西圏を中心とする複数の大学から、多くの学生が参加を表明しています。各大学で教鞭を執る当協会員の教員の方々も、学生のまとめ役、サポート役として定期的にオンラインミーティングを行い、大学の枠を越えた協働に向けて準備を進めています。

杉山氏によるオンライン・ワークショップ「原風景から発想する」

 先日開催されたオンライン・ワークショップにも、多くの学生が参加しました。まず伊藤雅子氏によるレクチャーが行われ、その後、杉山至氏によるレクチャー&ワークショップへと進みました。学生たちには事前に「原風景から発想する」という課題が提示されており、それぞれが「不在と沈黙」と「然―zen―」を念頭に準備。数名の学生による斬新で魅力的なイメージ・アイディアが発表されました。

 今後は学生たちのグループ分けを行い、展示ブースの実現に向けたコラボレーションを本格化させていく予定です。異なる場所、異なる大学で学ぶ学生たちは、これからどのように互いの考えを重ね、一つの展示空間をつくり上げていくのでしょうか? そしてプラハでは、世界各国の学生たちとどのような出会いや交流を経験するのでしょうか?

 大学の枠を越えた協働から生まれる日本の学生ブースに、ぜひご期待ください。

オンライン・ワークショップ(参加大学教員の方々)
発表された学生案の1つ
別の学生による案